肉筆 富士越龍図 – 葛飾北斎絶筆 –
この記事を書いた人

YUKA_chakuso-media editor in chief
東京生まれ。
途中経過でオーストラリアに育ち、
少しのあいだ、インドネシアで暮らしました。
赤い色とノラ・ジョーンズの声が好き。
ライフワークは旅で、今はポルトガルとハンガリーに行くことを夢みています。
昭和のエッセンスがほどほど残る、超テレビっ子世代のクリエイティブディレクターです。

- 形式:肉筆画(紙本着色)
- 描かれた年:1849年(北斎90歳、没年)
- 主題:霊峰・富士山を背景に、天空を舞う龍
- 落款:「嘉永二己酉年正月辰ノ日 宝暦十庚辰ノ年出生 九十老人卍筆」
葛飾北斎の絶筆(最後の作品)とされるのが、肉筆の「富士越龍図(ふじこしりゅうず)」です。
北斎は80代後半から90歳近くまでの間に数度と小布施を訪れていて、版画ではなく肉筆の作品をいくつも残しました。
晩夏、新潟の祖母の家から、ドライブでもしようと小布施へ向かいました。
せっかくだからと運よく予約が取れた「 桝一客殿 」に泊まり、
お土産に小布施堂で栗鹿の子でも買って帰ろうか――そんな軽い気持ちで訪れました。
ご多分にもれず、私も葛飾北斎の浮世絵に長らく魅了されてきた一人です。
けれど、彼が晩年に小布施で過ごしていたこと、肉筆画を多く残していたことまでは知りませんでした。
小布施に着いてから北斎美術館があると知り、そこで偶然に出会ったのが「富士越龍図」でした。
それが絶筆だとも知らず、ただ一枚の絵として眺めていたのですが、気がつけば体がぴたりと止まり、その場から動けません。
絵を前にして、まったく動けなくなるとは・・・初めてのことです。
龍のうねる勢いと、富士山の揺るがぬ静謐さ。その二つが拮抗しながら 緊張感を生み、
せめぎ合いながらも調和があり、ただただ圧倒です。